
観察実習
上越市立大町小学校は、全12学級の学校であり、各学年に1名の実習生を配属しています。
観察参加実習の一日目です。
まず、教育実習ルーブリックをもとに、観察参加実習の自己目標を意識します。このときの藤巻さんの自己目標は、先生方とコミュニケーションを図ること、そして子どもひとり一人をしっかり把握することの二つでした。
そして、全校児童の前で緊張しながらも明るくインパクトのある自己紹介をします。
いよいよ、初めて4年2組の子どもたちと対面します。そこでは、子どもたちの興味関心を意識して、さらに詳しい自己紹介と自分の目標などを伝えます。
早速、朝の会の子どもたちの姿をメモしたり、そばで様子を観察したりしました。
また、この1週間は、教育実習の構えや学校運営・校内研究についてなど、さまざまな講義も行われます。教育実習担当教員の先生からは、実習の構えをしっかりもち、その中での振り返りを大切にしてほしいと、実習の構えについて説明を受けました。
休み時間だけでなく、給食も清掃も子どもとともに行います。帰りの会には、子どもたちの方から積極的に近づいてきてくれることに嬉しさを覚える初日でした。

個別指導
藤巻さんは、4年生算数科の単元「三角形を作って、調べて、知ろう!」の学習指導案を作成しました。
個別指導の中で、図形指導の内容や系統性、思考の手立てなどについて指導担当教官から質問を受けました。
藤巻さんは、4年生で初めて学ぶ二等辺三角形への子どもたちのつまずきに着目していました。それは、見え方の違いに惑わされずに、二等辺三角形の特性に気づいてほしいという問題意識です。子どものつまずきや気づきを促す学習過程に着目しているよさを認めてもらいました。
しかし、それが3年生や5年生の学びとどうつながり、どのような思考を促すのかが明確でありません。ここで、指導内容の系統性や学習指導の手立てが重要なことに気づきました。
その課題点をもとに、再度、子どもの学びをシミュレーションしながら学習指導案の加筆修正を行いました。そして、夏休み中に大町小学校の指導教諭の先生のところに指導案を持参し、個別に指導を受け、改めて指導案をつくり直しました。

大研授業事後協議会
事後協議会は、実習生6名が企画運営して、職員朝会の折に先生方に参加をお願いしました。そして放課後、司会・記録・授業者と役割を明確にして会場準備し、多くの先生方に参加してもらいました。
まず、授業者の振り返りとして、藤巻さんは、学習の流れがイメージ通りに進んだことを良さとして述べた上で、児童の発言の少なさや子どもの実態から、課題が簡単すぎたのではないかという課題点を挙げました。この授業者の振り返りをもとに、実習生同士で、互いに気づいたことを意見交流しました。
実習生の意見交流が一通り終わったころ、先生方から、実習生が気づいていない多様な視点から意見をもらうことができました。正三角形と二等辺三角形を分類する際、見え方の違いに着目するような意図的な手立てが必要であったこと、辺の長さから二つの図形の特性を理解するには、子どもたちが自分の言葉で説明する場が必要であったこと、子どもの思考の流れを意識した二つの活動の順序性の吟味などです。
その後、指導教員の小池先生から、教材・教具の作成や準備のよさと、調査した辺の長さのポイントを全体で共有する場の必要性という問題点を指導してもらいました。また、教頭先生からは、指導案の読みやすさや二つの算数的活動の変化のよさと、机間指導のあり方、本時のまとめ方の別な可能性について指導を受けました。
これらの指導を受け、藤巻さんは、楽しく・わかりやすい算数活動をつくることだけしか着目していなかったことを反省として挙げました。子どもたちの思考のつながりを意識した活動構成や、自分の言葉で思考を整理する場面の必要性などに気づいたのです。

実習生の声
本実習最終日、藤巻さんは自分自身を振り返って語っていました。
【実習授業の省察】
- 成果…
- イメージした通りの授業展開ができた
- 教材教具の準備・活用ができた
- 課題…
- 算数的活動や教材づくりのアイデアをもつこと
- 子どもの思いや願いを生かし、発言につなげること
【自己課題の省察】
- 発問…
- 子どもにとって具体的で分かりやすい発問を心がけるようになった
- 指示…
- 丁寧な言葉遣いに心がけた
さらに、今後すべきこととして、「実習での経験を大学での授業や『学びのひろば』『ボランティア活動』に生かすこと」、「教職を目指す上で必要な体験に意欲的に取り組み、自分自身の引き出しを増やすこと」などを挙げていました。

指導教員の声
実習生藤巻さんの成長した姿を指導教員が語ってくれました。
【観察実習と本実習での成長】
始めは戸惑っている様子だったが、子どもと遊ぶ中ですぐにうちとけ、安心感をもって本実習に取り組んでいた。それが、表情の変容にも表れていた。
【研究期間による成長】
教材研究や事前準備を充分にすることで、2度の指導案検討を経て授業に対する自分の考えを明確にしていく姿が見られた。
このように観察参加実習で子どもとかかわり、研究期間で準備し考えることが実習生に安心感を生み出し、それが柔らかな表情や工夫した授業づくりにつながっているのではないかと話してくれました。

実習担当教員の声
大町小学校の実習担当教員が、成長した実習生の様子と分離方式初等教育実習のよさを語ってくれました。
【観察参加実習と本実習の変化】
始めは外から子どもを見ていたが、本実習では自分ごととして子どもの中に入ってかかわる姿が見られた。
【9月4週間実習と分離方式実習との比較】
9月4週間実習のときは、子ども理解が遅く、授業構想に終始していた。分離方式になってからは、学級や授業に対するイメージをもち、発問や進め方・反応の仕方など具体的なところに意識が向くようになった。
だから、「年々、実習生の授業のレベルが上がり、実習がスムーズに行われるようになってきた」と、分離方式初等教育実習の成果を語ってくれました。