
学年別指導
学年別指導には、学年別に異なる教科を指導する場合と、両学年に同教科で異なる内容を指導する場合があります。しかし、前者の場合は、一方の教科に偏りがちになるので、最近ではあまり用いられない方法です。後者の同教科異内容は、主要教科や学年の発達段階を強く考慮した場合に実践されます。
学年別指導の長所としては、系統性を踏まえた指導がしやすく、転出入の子どもがあっても左右されません。また、学年の発達段階に応じた指導が容易であり、低学年指導の場合、同単元指導に比べて指導しやすいことが挙げられます。逆に短所は、徹底した指導がしにくかったり、一人ひとりを生かした指導が困難であったりします。

直接指導と間接指導
複式学級指導において、これまでも直接指導と間接指導という用語は用いられてきました。
学年別指導の場合、教師が一方の学年に対して指導している時には、当然のことながらもう一方は、自主学習をしています。複式学級では昔から必然的にこのような状況がうまれていましたが、そこには「子ども自らが学ぶ」という現代の教育方法の重要なキーワードが含まれています。
また、これらの指導は交互であり、直接指導の次には、間接指導が行われるため、直接指導の際には、常に間接指導の課題提示を意識して指導することが重要です。逆に、間接指導では、直接指導につながるような自主学習でなければなりません。
これらの指導をスムーズに行うには、教師は十分な時間をかけて計画準備を行う必要があります。

「わたり」と「ずらし」
「わたり」、「ずらし」といったことばも複式学級指導に限った特殊な用語です。
学年別指導においては、教師は直接指導と間接指導とのバランスをとりながら、学習の成立を図らなければなりません。すなわち、一方の学年の直接指導からもう一方の学年の直接指導に移る必要性が生じるが、この教師の学年間移動のことを「わたり」と呼びます。
また、2個学年を交互にわたり歩いて、直接指導と間接指導の内容を充実させ、学習活動を無理なく効率的に行うようにするには、どうしても指導段階(課題把握や課題追求あるいは、定着や発展等)を学年別にずらした組み合わせが必要になります。この組み合わせを「ずらし」と呼びます。

実践教員の声
【A年度・B年度方式】
- 本事例の小学校では、教科によって、例えば音楽や体育、図工などではA年度・B年度方式と呼ばれる隔年でどちらかの学年の内容を教える方法をとっている。したがって、これらの教科では単式学級とまったく同じ指導方法になる。
【校外の活動や理科の実験】
- いくら工夫しても片方の学年がどうしてもおろそかになってしまう場面がある。
【複式学級で育つ力】
- 学び方を上学年から(子どもどうしで)学ぶことができる。
- 教員がいない場面では意見を出し合うことによって「考え」を深めている。
【教員の苦労】
- 自主学習の場面で使用するワークシートをいかに作成するか等々。
- 単純に言って教材研究が2倍かかる。