教員育成のためのモジュール型コア教材「教育実践編」

こうすれば読解力が育つ!新しい読書指導の方法

「読書へのアニマシオン」の実践と指導上のポイント

1.
「読書へのアニマシオン」の読書指導上の意義について

「読書へのアニマシオン」はスペインで1980年代に生まれた読書指導法です。これをなぜ現在の日本の読書指導に取り入れる意味があるのについてまず、述べたいと思います。

日本の国語科教育の中では、読むことの指導は、教科書教材をじっくり時間をかけて読む「読解指導」と、それ以外の本を自主的に読むことをサポートする「読解指導」に分けられてきました。

「読解指導」の方は一定の成果をあげてきましたが、長いものを読んで、考えを組み立てて、発表するということは、あまり指導されてきませんでした。また、OECDの行った国際到達度調査PISAの結果から、日本の読解指導が、国際的に通用する読解力を育てていないということも問題になってきました。

一方、「読書指導」の自主性が強調されすぎたため、実際には、読書指導はあまり盛んに行われてこなかったといえます。教師の側から言えば、読書という個人の趣味の延長のようなものを、教師が「指導する」ということ自体に抵抗があり、適切な指導法が開発されてこなかったといえると思います。

読書へのアニマシオンは、読書の指導法を集めたものなのです。様々なタイプの作戦と呼ばれる読書指導法が75種類も開発されています。なかには、スペインの詩を使ったものもあり、全部が日本の状況にあっているわけではありませんが、上手に選んで使えば、国際的な読解力をつけるための読書のしかたを子どもに身につけさせることができるのです。


2.
「読書へのアニマシオン」の実践上の課題について
(1) 授業の流れ

このビデオを見れば、読書へのアニマシオンのおおよその流れがつかめると思います。しかし、作戦によって、カードに書く内容、グループの作り方、子どもの解答のさせ方、教師が解答を示すタイミングなどが違います。詳しくは、『読書へのアニマシオン―75の作戦―』(柏書房)を見てください。

(2) 作戦と本の選択

次に重要なことは、子どもにつけたい力と選んだ作戦と選んだ本が合っていることです。例えば、子どもに多くの登場人物に着目させたいなら、作戦5「この人いたかな? いなかったかな?」を用いるとよいと思います。作戦5に用いる本は、10人以下の登場人物しか出てこないような本や、登場人物の性質が同じというようなものではいけないわけです。子どもがリクエストした本を用いるとしても、最終的に本を選ぶのは教師です。子どもたちに読んで読解力をつけさせることができる本かどうか、しっかり見極めてください。

なお、作戦は、子どもが本を読む前に明かしてはいけません。子どもは、先入観なしで読んでこなければなりません。作戦が始まったときに、どのような作戦かが分かり、読んできたことを使って、問いに答えようと考えるのです。読んできて、考えて、答えるという一連の過程で読解力がつくように、作戦はつくられています。そうでなければ、子どもは一つの観点に基づいた浅い読み方しかしてきません。

(3) カードの作り方

カードを作るのは、思ったよりも難しい作業です。作戦をよく理解し、その本を生かしたカードづくりでなければ、読解力を育てることはできません。例えば、せりふを選ぶとするなら、そのせりふを考えさせることで、子どもにどのような力をつけさせることができるのか、常に吟味を重ねなければなりません。もとのテキストの一部分を変えるなら、どのような変え方が、意味のある問いとなるか、適切に判断しなければなりません。

カード作りには、ある程度慣れが必要です。子どもに「読書へのアニマシオン」をする前に、学生同士や教師同士で作戦をやってみて、カードが適切かどうか議論することを、強くお勧めします。

(4) 雰囲気づくり

カードを作るのは、思ったよりも難しい作業です。作戦をよく理解し、その本を生かしたカードづくりでなければ、読解力を育てることはできません。例えば、せりふを選ぶとするなら、そのせりふを考えさせることで、子どもにどのような力をつけさせることができるのか、常に吟味を重ねなければなりません。もとのテキストの一部分を変えるなら、どのような変え方が、意味のある問いとなるか、適切に判断しなければなりません。

「読書へのアニマシオン」は、皆で一冊の本についてゲームをしたり話し合ったりするわけですから、基本的には明るく穏やかな雰囲気にしたいと思います。時には議論が沸騰するかもしれませんが、けしてけんか腰になったり、自分のカードの正否だけに固執したりさせてはなりません。本の中には、一人で静かに読んだほうがよいものあり、このような本は「読書へのアニマシオン」には向いていないといえるでしょう。とにかく、本について、話ができる雰囲気が必要です。のびのびと楽しくやっていくなかで、読解力が伸びていくものです。

(5) 本の管理

「読書へのアニマシオン」の最後のハードルは、本の管理です。基本的には、子ども1人か2人に対して本が1冊必要です。それを2週間前ぐらい前に用意して、子どもに手渡さなければなりません。しかし、最近では、「読書へのアニマシオン」に関心を寄せる市立図書館も増えています。複数の学校でグループを作って、本の貸し借りをしている例もあります。外国の読書教育事情を視察すると、スペインでも他の国でも、学校図書館や教師が中心となって、親の理解も得ながら、工夫して本の管理をしています。

読書指導は、本がなければできないわけですし、本の管理をするということは、読書指導をする教師の基本的な技術であるのです。「読書へのアニマシオン」がきっかけとなって、日本でも、多くの本が子ども読まれ、子どもが読解力をつけるようになることを願っています。


■参考サイト・参考文献

◆『読書へのアニマシオン―75の作戦』

Maria Montserrat Sarto、 Carmen Ondosabar 原著

柏書房 2001年

◆『読書へのアニマシオン入門―子どもの「読む力」を引き出す』

有元秀文

学習研究社 2002年

◆『「山形大学教育学部紀要(教育科学)」第13号第3号 193〜204頁

スペインにおける『読書へのアニマシオン』の源流と拡大状況

足立幸子 2004年

◆『子どもと楽しく遊ぼう 読書へのアニマシオン―おすすめ事例と指導のコツ』

黒木 秀子 鈴木 淑博

学事出版 2004年