教員育成のためのモジュール型コア教材 臨床編

学級経営に生かす構成的グループ・エンカウンター

その効果的な実践のために

1.
グループ・アプローチとは

人間関係のパターン (15秒)

SGEとはグループ・アプローチの中の一技法です。そもそもグループとは何でしょうか。

人間が集まると人間関係が生まれます。人間が2人だとその人間関係は1通り(A-B)ですが、人間が3人だと人間関係は4通り(A-B、B-C、A-C、A-B-C)になります。人間が40人だと、その間の人間関係の潜在的なパターンは、なんと一兆パターン以上になります。教室にはこのような人間関係の力が潜在しているのです。

グループ・アプローチとはこのような人間関係が持つ力を、個人の心理的治療・教育や対人関係の発展のために用いようとする心理学的な技法なのです。

<その他のグループ・アプローチの技法>


2.
SGEとは

スゴロク・トーキング (4分24秒)

SGEを実践している様子を見てみてみましょう。

これは中学1年生が「スゴロク・トーキング」というエクササイズをしているところです。スゴロクをして楽しく話をしながら互いに理解を深めています。

<スゴロク・トーキングについて>

<スゴロクシート【PDF】>

[SGEの3つの要素]

構成的グループ・エンカウンター(SGE)は、その名の通り、「構成(Structure)」と「グループ(Group)」と「エンカウンター(Encounter)」の3つの要素から成り立ちます。

それぞれの頭文字をとってSGEと呼ばれます。


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  • 構成

構成の4つの条件

  • エクササイズ:何をするのか
  • グループ:誰とするのか
  • ルール:どのようにするのか
  • 時間:いつまでするのか

SGEのエクササイズは、通常、上にあげた4つの条件をもって構成されています。

全くの自由を与えられるとかえって人間は自由に振る舞うことが困難になります。逆にこのような枠に囲まれた中で活動することで、メンバーはかえって自由に行動することができます。

SGEはこのような枠組みの中で活動することをもって、より自由な活動や自己表現を促していこうとする特徴を持っています。またこのような枠があるためにメンバーを心的外傷から守ることもできます。このような理由により、SGEは学校現場への大きな適用可能性を持っていると言えます。


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  • グループ
  • 2人〜数十人(通常は4人〜6人程度)

人数が大勢いるだけでは効果はありません。その間に相互作用があって初めて効果が生まれます。

例えば左図のような状況では、人間が何人いても相互作用は0でその力を活用することはできません。SGEは上で述べた「構成」を利用して成員間の相互作用を活性化し、その力を活用します。


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  • エンカウンター

エンカウンターとは出会いのことですが、SGEにおける出会いには、次のような特徴があります。

【例】

(1) AさんがBさんと出会い、AさんはBさんのことを「真面目そうな人だな」と思う。
(2) AさんはBさんにそのことを伝える。
(3) BさんはAさんの眼に映った自分に出会う。

このような他者との出会いを通した自分との出会いがSGEにおける出会いと言えます。

このような出会いは、期待に満ちたわくわくするような出会いであると同時にそれは場合によっては意外な、直面しづらいこともある出会いです。


3.
SGEの実際

インストラクション (1分06秒)


ウォーミングアップ (18秒)


シェアリング (1分12秒)


SGEを実践する際には次のような手順を踏んで行います。

[SGEの4つのステップ]

  • インストラクション:ねらい・手順・ルール・ポイントなどを説明

必要なことを伝えることはもちろん大事ですが、メンバーのモチベーション(動機づけ)を高め、維持することも重要です。要領よく、具体的かつ簡潔に行いましょう。

ルール等の決め事は、できるだけ3項目程度以下にし、それ以上の場合は黒板に書き出したり、プリントを配るなどの配慮が望まれます。必要に応じて、リーダーが自ら演示(デモンストレーション)を行うことも効果的です。

また開始当初にねらいを強調しすぎると、メンバーがそれを意識してかえってリアルな体験が失われたり、それ以外の貴重な体験を見落としてしまうことがあります。

活動全体を見通して、最適な形で必要事項を伝えることが望まれます。

  • ウォーミングアップ:エクササイズに向けた心身の準備状態を作る

インストラクション終了後すぐにエクササイズを始めることも可能ですが、エクササイズの前に適切なウォーミングアップによって不安や緊張感をなくしたり、エクササイズに向けて適切な心身の準備状態を作ることでより一層円滑に活動を進めることができます。本事例では、エクササイズの前に簡単な言語的ウォーミングアップを行っています。前のインストラクションと順序が入れ替わることもあります。

<ウォーミングアップについて>

  • エクササイズ:本音と本音の交流(エンカウンター)を促進する誘発剤

4.SGEの目的(エクササイズとは)」を参照。

  • シェアリング:エクササイズでの体験をメンバーと共有し、確認する作業

エクササイズでの体験は個人のものですが、それをメンバーと共有することで、新たに見えてくることもあります。またこのことにより、よりこころに定着しやすくなります。

<シェアリングで留意すべき点>


4.
SGEの目的(エクササイズとは)
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SGEのエクササイズとは、メンバーの相互作用を活発にし、本音と本音の交流を進める促進剤です。

このエクササイズに対する取り組みを通して、メンバーは、こころにさまざまな気づきを残していきます。これをエクササイズの機能といいます。SGEのエクササイズの機能には自己理解、他者理解、自己主張、感受性、信頼体験、自己受容の6つがあります。

<エクササイズについて>

SGEは、上記の6種類のエクササイズへの取り組みを通じて(1)人間的成長と、(2)心的機能の発展(3)人間関係の発展を促す心理的活動であると言えます。

<SGEの目的について>

ところでゲームやレクリエーションが、ストレスを発散するなど、心の中の何かを消す機能を持つのに対し、SST(社会的技能訓練)などは心の中に気づき(技能)を残す機能を持ちます。そしてSGEはその両者の側面を併せ持った活動といえます。

SGEを有効に活用するにはこのようなSGEの機能をよく理解した上でどの側面をどのように活用するのかをよく吟味することが望まれます。

<SGEとその他の活動について>


5.
SGE実施上の留意点
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SGEを実施する時に留意すべき点として以下の諸点があります。

1. SGEのエクササイズには、いわゆる「正解」のようなものはありません。どのような体験も正しく、すべてに意味があると言えます。
そのような中でメンバーに生じるさまざまな体験を受け止めていくには、リーダーが「開かれた姿勢」でいることが重要です。

<開かれた姿勢について>

2. すべての活動には多かれ少なかれ「抵抗」があります。「抵抗」とはいわば車のブレーキのようなものです。これに対して、活動を進めようとする働きかけは、いわばアクセルです。アクセルとブレーキを同時に踏むと車は壊れてしまいます。
しかしながら、このような抵抗はあって当然であり、であるが故にそれなりの対応を考える必要があります。

<抵抗の種類とその対処>

3. SGEは有効な技法ですが、同時にそれはメンバーのこころに関わる活動です。
実施の目的にもよりますが、基本的にインスタントな効果を望むことはできません。中長期的な見通しを持って計画的に進めることが望まれます。

<実施計画の立案>