
箱庭療法の歴史
- ローエンフェルト(Lowenfeld,M.)
- カルフ(Kalff,D.)
- 河合隼雄
自分の気持を自由に表現できない子どものための心理療法の1つとして、 「世界技法」(1929)を考案。
ユングの分析心理学を導入して、成人にも効果のある治療法として「Sandspiel,Sand Play Technique」を開発。
カルフの技法を「箱庭療法」として日本に紹介(1965)。

箱庭療法と他の遊戯療法や絵画療法との違い
- 三者ともに非言語的な表現を媒体とするのは共通するが、箱庭療法の特質は遊戯療法と絵画療法の中間にある(河合、1969)。
- 箱庭の作品の流れを見ていくことは、遊びの過程を見るよりも意味が分かりやすい。
- 箱庭の方が絵画よりも手軽に行われやすい。
- 箱庭療法では多数の玩具(ミニチュア)が用意されているので、作り手には「ぴったり感」が表現できる。ただし、箱庭療法用具を準備するためにはコストがかかる。

風景構成法による箱庭療法の適応基準
- 風景構成法で以下のサインが見られた場合、箱庭療法の導入を見合わせる(山中、1999)
(1)色彩ショック(色彩拒絶、中断)
(2)「川」と「道」が彩色段階で逆転(意識水準の低下)
(3)中井のいうP型(アイテムの重なり、空間の歪み)
(4)「枠」の外や線上にアイテムを描く

箱庭療法はなぜ効果があるのか
- 砂が<自我の退行>を促進させ、多数の玩具を使って「何かを作る」ことが自己治癒(Self-healing)の力を働かせ、自己(self)の象徴が生じる。遊びの中で、人は自らの全体性へと近づく。
- 「自由で保護された空間」(カルフ)が治療関係の中で作られたとき、自分を表現する自由が生じる。
- 意識と無意識、外界と内界、心と身体が交錯するところにイメージが生じ、次の段階を通過して環境に適応できるようになる。
(1)動物的・植物的段階
(2)闘争の段階
(3)自己が対立を統合する段階

不安とは何か
- 不安は自己の安全感が脅かされやすいことから生じ、自己評価を低下させる。
- 不安を引き起こす状況・対象を回避したり、抑圧するために、自我の発達停止状態になり、学習が困難になる。
- 自己愛的な代償(TVゲーム、インターネットなど)を行うと、ますます対人関係が困難になってしまう。
- 不安が自我の中に統合されると、学習や遊びが大きく進展する。

援助のポイント
- 思春期は親から分離し個体化する時期であり、このために不安が強くなる。そこで以下の3つの領域で自己評価(自尊心)が上がるように援助する。
(1)[理想・目標づくり]
不安が強いと自己評価が低下して羞恥心が強くなるので、その背後にある理想や承認・賞賛を求める<自己愛的欲求>に注目して、理想や目標を育てる。
(2)[友人づくり]
親に代わる友人関係を求めるので、対人場面での困難な状況を分析して、対人関係が広がるように援助する。メンタルフレンドや適応指導教室・フリースクールを活用する。
(3)[スキルの開発]
目標を達成するためのスキルが必要になるので、適応指導教室などの社会資源を活用する
■参考サイト・参考文献
【カウンセリングに関するもの】 ◆『教師教育用学習素材コンテンツ 教師の力量アップをめざして 臨床編 教育相談活動』 メディア教育開発センター 2005 ◆『新しい実践を創造する 学校カウンセリング入門』 国立大学教育実践研究関連センター協議会 教育臨床部会編 東洋館出版社 2007 【箱庭療法に関するもの】 ◆『カルフ箱庭療法(新版)』 ドラ・カルフ著 山中康裕 監訳 河合隼雄 解説 誠信書房 1999年 ◆『箱庭療法入門』 河合隼雄 編 誠信書房 1969年 ◆『箱庭療法の実践』 DVD教材(木村晴子監修)クリエーションアカデミー 2007 【風景構成法に関するもの】 ◆『中井久夫著作集 別巻 (1) H・Nakai風景構成法』 山中康裕 編 岩崎学術出版社 1984年 ◆『心理臨床と表現療法』 山中康裕 編 金剛出版 1999年 |